既製靴の最高峰ともいわれる東欧ハンガリーの靴メーカー、VASSの第三弾はベーシックな黒のローファー、Slipperというモデルです。
黒のローファーはビンテージのウエストン180を所有していましたが、USEDということもあってか足に馴染まず手が、いや足が伸びなくなってしまったためそちらを手放してこちらを購入したという経緯になります。
やはり黒のローファーは便利でこの夏に早速活躍してくれています。
実は入手自体は5月だったのですが、ちょっとしたトラブルがあり…履き下ろしは8月になりました。
前々回のFラスト、前回のP2ラストに続き、このポストではSlipperモデルの詳細、Pラストのサイズ感、革質、かかる関税、そして個人輸入では怖いトラブルとその対応についてもお伝えいたします。
ご参考になれば幸いです。
Slipper Pラストの詳細
今回購入したSlipperはこちら。
Slipper、いわゆるスリッパ。ローファーではなくあえてのスリッパ、VASSのローファーの名称です。
ご覧の通り、つまみモカとサドルの非常にベーシックな形、クセがなく柔らかい丸みのあるラインです。
このSlipperも今回のPラストだけではなくFラストなど他ラストでも出ています。
革は前回のBudapestと同様にブラックカーフとしか書かれていませんでしたが、おそらくイルチアのボックスカーフ。
これは到着時してから軽くブラッシングした後に撮影したものですが、艶があり肌理もきめ細かいです。
出し縫いはItalian Oxford、Budapestと同じく細かくありませんが、丸っこい靴のフォルムにはマッチするピッチかと思います。修理の観点からも優しい。
サイドビュー。
トゥの立ち上がりから緩やかにサドル、甲まで続く立ち上がり。絶壁とまではいきませんが、丸みのある東欧靴らしいフォルム。
そしてヒールも綺麗な曲線でしっかりとかかとをホールドしてくれそう。
個人的に一番の着目点はヒールカーブだと思います。
バックビュー。
ヒールはウエストンと同じ仕様、センターにシームが入り、履き口にはぐるっと革が巻かれています。
サイドで見たときと同様に、ヒールは包み込むような形で、このヒールの包み込みはFラスト、P2ラストでもそうでしたがVASSの特徴といっても良いであろう抜群のフィット感です。
ソールはもちろんレンデンバッハ、そしてチャネル仕上げ。
1足目のItalian Oxfordで経験して以来、ギュッと詰まったレザーソールらしい感覚ですっかり病みつきに。ラバーのようなグニュっとした柔らかさではなく、ゆっくりと地面に馴染む、というかなんというか…
さらにレンデンバッハは削れにくく、トゥもスチールなしで履き下ろしても怖くなくなりました^^
そしてこちらも純正シューツリー付き。少々見づらいですがPラスト専用という証か、Pの文字が刻印されています。
FもP2も、そしてこのPも、純正シューツリーではありますが、ピッタピタのフィットというわけではないのはまあご愛敬、かな。
小窓なしのライニングに直書きのサイズ表記、かと思いきや謎の記載^^;ラスト名もサイズも記載がないように見えますね。
インソールのフルソック仕様はItalian Oxford、Budapestと変わらず。VASSですっかりこのフルソック仕様にも慣れました。
そしてローファーということでかかとの抜け防止に、すべり革の部分は裏革となっています。
前述の通り、ヒールの丸みでかなりホールド感が良さそうなことに加えて裏革仕様、ローファーを履く時の死活問題と言っても良い、かかとの抜けはかなり抑えられるのではと感じます。
FラストもP2ラストも絶賛しかしていませんが、このPラストのSlipperも丁寧に作られて非常に良い印象を受けました。
Pラストの特徴
今回のSlipperはPラストです。
前々回ののFラストはロベルトウゴリーニさんが作ったもので、他にも細身のシュッとしているUラスト、Kラスト、Sラストは全てウゴリーニさん作、イタリアンラストと呼ばれます。
その一方で、東欧靴らしいラストは今回のPラスト、前回のP2ラスト、他にBudapesterラスト、3636ラスト、Rラストなどがあります。
その中で、PラストはVASSの中ではNorwegerとLoaferに使用されるもので、形は対象で甲の抑えもそこまで強くないラストです。
サイズ感や履き心地は後述しますが、内振りも控えめ、ウエストの絞りも控えめとP2ラストと似た形に見えます。
正面から見てみても、少しの捻ればありますが、中心からかなり対象に近い形になっていることがみて取れます。
履くとどのような感覚、フィット感でしょうか?楽しみです。
プレメンテ
プレメンテは最近の定番方法である3日間プレメンテを実施しました。
今回使ったクリーム類は以下です。
- デリケートクリーム:サフィールノワール ナッパデリケートクリーム
- 保湿クリーム :ブートブラック リッチモイスチャー
- 油性クリーム :サフィールノワール クレム1925
- ソール :ブートブラック レザーソールコンディショナー
P2ラストと同じであろう、イルチアのボックスカーフ。このSlipperも同様にメンテにしっかりと応えてくれる革で、キメも細かく綺麗に光ってくれます。
こちらもP2ラストのBudapest同様に、当面はクレムを使っていこうと思いますが、あまりギラっとするよりはBrift HのThe Creamでナチュラルに仕上げた方が良いかなという気も。
気分にもよりますし何に合わせるかにもよるので今後調整ですね。
※3日間プレメンテは以下をご覧いただければ幸いです。
Pラストのサイズ感
プレメンテをしたのちに履き下ろし。
私はUK7E、US7.5D、25.5cmを選ぶことが多いですが、サイズは40(UKだと6に相当)を選びました。こちらも事前にVASSに問い合わせて、Fラストが40.5、P2ラストが40ということを伝えたらP2ラストと同様に40がよい、というアドバイスをもらいました。
足によっては合う合わないはあると思いますが。イタリアン系のラストから東欧系ラストはハーフサイズダウンだと合うケースが多いようです。
今回もアドバイス通り40にして正解でした。
足入れ時には空気の抜けるシュポっという音、ボールジョイントの締め付け、甲の締め付けは少なくウエストンのような万力フィッティングではありません。それなのにかかとの抜けもありません。
ローファーだと甲の抑えが重要に思えるのですが、このPラストは前述の通り甲の抑えはそこまで強くありません。ですがかかとの抜けがない、というのはヒールと踏まずでホールドしてくれるから、かなと。
サイズ選びが難しいローファーですが、履き口は笑うもののフィッティングは良いです。
実はトラブルが…その対応も素晴らしかったVASS
最初の導入部分で書いたトラブルですが、実は試着の際にサドル部分が裂けてしまったのです。
サドルの縫い目に沿って、まるで切り取り線に沿って紙を破くように…もちろんシューホーンを使って、そっと履いたのですが、フィッティングが良いこともあってか無理に力がかかってしまったのかもしれません。
フィッティングが良かっただけに、まさに天から地に落ちるような感覚…
VASSにサイズ選びの相談をしていたこともあって、サイズは良かったんだけど、裂けてしまったと伝えたんです。
そうしたらなんとなんと、あってはならないことだから交換対応します、とVASSから連絡が!
ということで、一度ハンガリーに送り返して、再度新しいものを作ってもらい再送付してもらいました。
ということでハンガリーへ送ってから新しいものを送ってもらうまでに2ヶ月ほどかかったため、履き下ろしが遅くなってしまったわけですが、新しく送ってもらったものは裂けることなくに快適に履けています。もしかすると、少しパターンや縫い目を調整してくれたのかもしれません。
神対応とはまさにこのことかと思いました。VASSがより好きになった瞬間です。
購入先、価格と関税
このSlipperもディスカウント対象になっており、€520から30%のディスウント、さらにVATを除くと靴本体は€286でした。
※1ユーロ=122円で計算しています。
靴 | €286 → ¥34,892 |
送料 | €40 → ¥4,880 |
関税 | ¥7,800 |
合計 | ¥47,572 |
関税は少し高かったですが、フィッティングも良く革も作りも良いローファー、ツリー付きならばやはり値頃感はあります。何よりも国内定価を考えれば非常に安いです。
まとめ
Italian Oxford、Budapestに続いてVASSノローファー、Slipperのご紹介でした。
改めて靴の仕様・価格などをまとめると以下になります。
モデル名 | Slipper |
革 | イルチア ブラックカーフ |
ラスト | P |
ソール | レンデンバッハ |
付属品 | 純正シューツリー |
サイズ | 40 |
価格 | ¥47,572 |
8月に入ってから履き下ろし、まだ数回の着用ですがすでに足馴染みよく靴擦れなどもありません。どのラストを履いてみても今のところVASSは私の足にあっているようです。
また、今回のトラブル対応についてもVASSにしてもらった対応が本当にありがたく感謝しかありません。
より一層VASSのことが好きになった一足となり、思い入れも強くなりました。
VASSのセールはまだ続いているようなので、これは今のうちに、が加速してしまいそうです^^;
コメント
コメント一覧 (5件)
先日、VassのFラストのサイズ感についてお聞きしたOrsoです。
Vass3足目いっちゃいましたか!AldenをベースにWestonの上品さの香りを付けたという感じのデザインですね。モデル名がSlipperというのが可愛い笑
Vassのトラブル対応が素晴らしかったというお話、ちなみに交換の送料はどうだったんですか?海外メーカーとの通販だと売ったきりでアフターケアは期待出来ないものですがVassは誠実ですね。
この品質で個人輸入ならあの値段、私も3足目、4足目と行きたいところですが、家計的にも妻の目にも(苦笑)許されないので指くわえて眺めてます笑 臨時収入が入れば次行きたいです!
Orsoさん、コメントありがとうございます!返信遅くなりまして申し訳ありません。
確かにAldenのローファーにも似ていますね^^Slipperは私もびっくりしましたw
交換の送料についてですが、こちらからの返送もブダペストから送付してもらう分も全てVASSが負担してくれました。
まさか交換してもらえるとは思ってなかったので、本当にありがたかったですし、よりVASSのことが好きになりました^^
私もこのSlipperはWestonを売ったお金で購入したので、増えてないのでよし、と勝手に思っています笑。
引き続きよろしくお願いいたします!
海外なのに往復送料を負担してくれるなんて素晴らしいですね!国際宅急便だし金額も高いはずなのに。そんなことしてくれたらファンにならないわけがないですね!
興味本位の質問になってしまいますが交換品も関税はかかったんでしょうか?
今回の購入資金にWestonを売られたそうですがメルカリとかの個人売買ですか?実は売ってお金に替えたいなと思ってる靴があるのですが、そういうのが全く経験が無くて参考にお聞きしたくなりました ^ ^
Orsoさん、コメントありがとうございます。
そうなんです、普通に考えたら往復1万近くかかっているはずなので…
今日までFlush Saleもやってて全部VASSにしたいくらいです笑
Westonはおっしゃる通り個人売買です。今はいろいろ手段があって制約も無くなってきているので、ぜひ試してみてください^^
靴の原価がどれくらいか分かりませんか一万円近くも負担してくれたら殆んど儲けが無くなってしまったんではないかと心配になってしまいますね。Vass誠実なメーカーですね。
Flush Sale、私が買った靴も対象になっていて買うのがちょっと早かったなと思ってしまいました(笑)。追加で買いたいのは山々ですが泣く泣く見送りました。
個人売買、試してみようかな。アドバイス有り難うございました!