COL(コルウ)のビスポークスーツが現代的クラシックを具現化してくれた

本ブログでお馴染み、神戸のCOLにてオーダーしていたビスポークスーツが完成しました。ビスポークは5回目、スーツは3着目となります。


今回も特別な素材、そして素材を活かしつつもCOLらしい落とし込みによる中庸な仕立てで、私個人の解釈としては現代的クラシックの極みのようなスーツを仕立てていただいきました。


ビスポークを考えている方でもそうでない方でも、オーダーの過程、仮縫い、納品と是非ご覧いただければと思います。

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そもそもクラシックなスーツとは何か

クラシックという言葉はメンズドレス界隈で非常によく使われる言葉です。一方で明確な定義がバチっと書いてあることもなく曖昧な言葉という理解でおり、結局クラシックって何なの?って思っていました。とはいえ、ブログのタイトルにクラシックと書くからにはこのポストにおけるクラシックの解釈を私なりに言語化しておこうと思います。

よく言われるクラシック

生成AI等でクラシックスーツとは何かを問いかけると以下のような回答が返ってきます。

  1. 英国の伝統的なスタイル
  2. ビルドアップショルダーをはじめ構築的であり、重心が低く品格と威厳を表現
  3. スリーピースに保守的な色柄(ダーク系、無地かチョークストライプなど)
  4. ワイドラペル、段返り3つボタン、チェンジポケット、長い着丈に低いゴージライン


他にも色々と要素はあると思いますが、ざっと上記の要素を持ったものがよく言われるクラシックでしょうか。世の中で言われているクラシックは必ずしも上記に当てはまらない(というか全部当てはまる方が稀ではないかな…)し、クラシコイタリアは?みたいなことになるので、こちらに加えてクラシコイタリアは以下のような感じ。

  1. 構築的な要素が抑えられており、エレガントさを感じられ、威厳ではなく優雅さ・ゆとりを表現。
    着心地とエレガンスが同居するもの
  2. 光沢感のあるとろみがあり、青や茶など色の発色も良くダークカラーに依存しない
  3. バルカポケットや雨降り袖など、曲線やドレープ感を表現


イタリアは北部中部南部、つまりミラノ、ローマ、フィレンツェ、ナポリでも異なったスタイルがあるのでこんな単純ではないと思いますが…一旦簡潔に上記とします。

この記事におけるクラシックの定義

私が今、クラシックを端的に一言で言うなら…というので思い浮かぶ言葉は中庸であること、というもの。中庸は無難、という意味合いでネガティブに捉えられなくもない言葉、おいおい何いってんだよわかってねーな…という意見もあるかと思いますが、伝統が受け継がれ本質的なところが万人に受け入れられる、どこにいっても違和感のないもの、という側面でこの言葉が合うかなと。


イギリスなのかイタリアなのか、どっちを軸足に置くかで捉え方も変わりますし、私の中でもきっと変化をしていくのだと思いますが、この記事においては以下をクラシックとしようと思います。書いてみるとやっぱり言語化は難しい笑
※ラペルの幅が何cmで…みたいな明確な定義は難しいというか、それこそバランスの問題と思うので記載しません。それを定義しちゃうとガチガチで身動き取れなくなりそうですから。

  1. 構築的すぎず柔らかすぎないこと
  2. 端正で癖のないもの
  3. バランスが取れているもの
    (例えば裾幅など、極端にどこかが細かったり、着丈が短かったり等々、パッと目につく特徴がないもの)
  4. 生地や仕立てが上質であること


はい、まさにこんなスーツを仕立てていただいたのです。サッとイメージを伝えたのみでCOLさんが具現化してくださった。前回のスーツもそうですが、イメージとして固まってきた感があります。

COL ビスポークスーツのオーダープロセス

改めてオーダープロセスを書いてみると以下のような形。流れに沿ってご紹介。

  1. 生地・採寸、仕様決め
  2. 仮縫い・中縫い
  3. 納品

1.生地・採寸・仕様決め

オーダーで最も悩ましく、最も楽しいプロセス。


生地で悩むこと、それらが形になった時にどうなるのかの想像を働かせること、そもそもどういう仕様にするのか決めること、そして出来上がったものを着てどう合わせるのか、どんなところに着ていくのかを想像すること。そしてそれらについて会話を重ねて作り手とすり合わせをすること。


このステップでの楽しさは何度やっても楽しいものです。

ダンヒル カンデブーモヘア100%
ダンヒル カンデブーモヘア100%
ダンヒル カンデブーモヘア100%

今回オーダーしたものはビンテージのカンデブーモヘア100%の生地、何とダンヒル製。イギリス製であることはわかっており、どこが織ってるのか明確にはわかりませんが、William Halsteadあたりでしょうか。


いずれにしても濃紺の素晴らしい色合い、そしてモヘア特有の光沢にシャリっとした肌触りは唯一無二です。仕立てを間違えると光沢が悪目立ちしてどこかの貴族になりますね、なんて会話してました笑。


この生地をベースにどんな仕立てが良いかを会話して決めていきます。生地に合わせてそれに合う仕立てを選択できるのはCOLの強みだと思いますが、この生地を活かすように癖のない仕立て、でも構築的すぎない形でお願いしたいということを伝えました。
※この辺りも迷っているとサッとアドバイスをいただけます。


採寸については私は以前作っていただいたものをベースに改善して欲しいところがあれば伝える程度になってきていますが、必要に応じて各所を測ってもらいます。

2.仮縫い・中縫い

COL ビスポークスーツ 仮縫い

オーダーから1.5-2ヶ月もすると仮縫いの連絡をいただきます。私の場合は関東に住んでいるので、東京でのトランクショーか、神戸付近に出張のある時かを利用して仮縫いに行くことが多いです。


仮縫い、中縫いでは実際に着用してバランスや気になる点を会話しながら微修正していきますが、やはり具現化されたものを見ると自分のイメージとの乖離がないかが確認しやすくなります。現物を見ながら各所寸法やパンツの細かな仕様などを決めて完成へと向かいます。


なお、今回は回数を重ねていることもあり中縫いなしで納品に向かうことになりました。なので完成まで4ヶ月程度での出来上がり。速い。(懐が心配になりますが…)


肝心の仮縫い時の写真を撮り忘れているので、過去の記事を参考までに…

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3.納品

COL ビスポークスーツ 完成

仮縫いを経て、次のトランクショーにて完成したスーツが納品。仮縫いと中縫いの時とはまた違った嬉しさ。実際に具現化されたものを見るとたまらない気持ちになります。

文句なし。詳細は後ほどご紹介しますが全体のバランス、フィッティング、カンデブーモヘアの生地感、どれをとっても納得の仕上がり。身体にしっかりあっているので着心地は非常に軽いですが、形もしっかり維持される。まさに構築的すぎず柔らかすぎずの具現化。


ぱっと見、黒かな…?と思うような深いネイビーのスーツ、仕事でどこに着て行っても間違えようがない一着ですが、モヘア100%ということもあって良い光沢感があることから、結婚式やパーティ(パーティがそもそもあるかは置いておいて)にも着ていける一着です。

納品が終わった後は楽しい生地探し。そうです、オーダー沼に浸かってしまうとこうなる。先日収納問題が…とか言っておきながら、次を考える有様。


上のブルーとホワイトの千鳥格子はチェルッティのリネンコットン、こちらは次の春夏にCOLさんお得意の芯なしジャケット、Su Misura All’atelierでお願いしようかと検討中。


下のベージュとブラウン、そのほかグレーやグリーンもミックスされた千鳥格子はDRAPERSのウール。これは以前迷って見送りましたが、3年くらい作ればよかったなあとずっと引っかかっていたので、次はこちらでオーダーすることにしました。
※ORAZIO LUCIANOでこの生地を使ったジャケットがリリースされていました。


3の納品から1に戻る無限ループ、果たしていつ終わるのかはわかりませんが、まだまだ楽しみたい流れです。

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COL ビスポークスーツの詳細

出来上がったスーツのご紹介。写真中心にいきます。

中庸、その一言に尽きる。加納さんからは今の時代でどこに行っても通用する形に仕立てたとおっしゃっていただきました。


ゴージライン、ラペルの幅、Vゾーンも程よく空間が取られ、大胆なラペルのロールや雨振袖などのディテールも抑えられています。まさに欲しかったものそのもの。

サイドベンツ。肩周りのドレープ、これは立体的に作られている証拠ですがカンデブーモヘアの上品な光沢が見て取れます。ちょっとケアは気を使いそうですが、モヘア100は初めてなので、どんな表情になっていくのかが非常に楽しみです。



ジャケットはもとより、パンツも素晴らしい。ストンと落ちる計算されたパターン、しっかり取られた股上に美しいシルエットを出す2アウトプリーツ、ハンドの閂、生地の耳がポケット裏と裾にさりげなく。裾幅は21cmとここ最近で最も好きな太さで、しっかり着丈のあるジャケットとのバランスもとりやすい。


ジャケットもパンツも随所にハンドの温もりを感じつつ、それをいい意味で感じさせないつくり、まさに現代的クラシック。

クラシックなスーツはクラシックに

このスーツは当然クラシックにいくべし、ということでレスレストンの無地シャツにタイユアタイの小紋タイと合わせました。おろし立てでも抜群の着心地。モヘアのシャリっとした感触が新鮮。


上記で定義した今時点で私の思うクラシック、以下要件を全て満たしてくれる一着になりました。

  1. 構築的すぎず柔らかすぎないこと
  2. 端正で癖のないもの
  3. バランスが取れているもの
    (例えば裾幅など、極端にどこかが細かったり、着丈が短かったり等々、パッと目につく特徴がないもの)
  4. 生地や仕立てが上質であること


実は前回作っていただいたスーツも実はその通りに。春夏と秋冬の看板スーツとして活躍してもらおう。

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まとめ

クラシックとは何か。多分今後も色々な経験を通して解釈が変わってきたりするのかもしれませんし、ただの服好きである私がそれを書くなんてどうなのかと思うところですが、一丁前に書いちゃいました。それを体現してくださったCOLの皆様、いつもありがとうございます。


ただの服と靴紹介だけだとマンネリ化してきているので、こんな解釈も加えながら書いていこうと思います音で、引き続きお付き合いいただけたら幸いです。

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